核融合炉長時間運転に向けたプラズマ壁相互作用が密度制御に与える影響の解析

担当:奥村海斗

核融合炉の長時間運転によって、プラズマにより壁の表面から壁材料が不純物としてはじき出され、再び壁表面に付着し再堆積層を形成する。炉心プラズマから漏れ出た燃料粒子は、再堆積層に入射して吸蔵される。その後、壁表面で再結合し、水素分子として壁から放出され、炉心プラズマ中で電離し再びプラズマとなる。この一連の過程をプラズマ壁相互作用と呼ぶ。

核融合プラズマの長時間維持には,炉心プラズマ密度を制御する必要がある。しかし、プラズマ壁相互作用に伴い壁から放出された粒子が大きな燃料粒子源となると、プラズマの密度制御に影響を与える。場合によっては、外部からの粒子供給では密度制御が不可能となる。

そこで、本研究では長時間運転が可能なQUESTを対象とした数値シミュレーションを行い、プラズマ壁相互作用が密度制御に与える影響を明らかにすることを目的とする。

 本研究のシミュレーションには2次元・3次元モデルと比較して計算コストが低い0次元的方程式(レート方程式)を用いた。そのため、それぞれの領域の密度などの物理量は全て一様である。本モデルは、水素プラズマ、中性粒子、壁内H粒子の粒子バランスの式で成り立っている。下に簡易的に表した粒子種に対する0次元レート方程式を示す。

ここで、niはプラズマ粒子や中性粒子の平均体積数密度を表している。また、τは閉じ込め時間、Raはある粒子種の生成反応に関わるレート係数、Rbは消失に関わるレート係数である。Siは注入や排気、壁からの粒子による密度の増減レートである.

0次元バランスモデルを計算することで、それぞれの領域での粒子数を求めることができる。しかし、0次元バランスモデルの計算をするためには先にいくつかの計算をしなければならない。まず最初に考慮する全ての反応に関する反応断面積を計算する。その後、反応断面積から衝突輻射モデルを用いて実効的な反応レート係数を計算する。そして得られた実効的な反応レート係数を上のRaやRbに代入することで計算することができる。

この0次元バランスモデルを用いてリミター配位(左)およびダイバータ配位(右)におけるそれぞれの領域の粒子数を計算によって求める。下図の矢印はプラズマの輸送を表している。右のダイバータ配位は実際の核融合炉に用いられる構造である。この2つの配位にて炉心のプラズマ密度にどのような影響があるかを解析する。

ダイバータ配位の研究において、ダイバータとSOL領域のプラズマ密度を決定するモデルとして5点モデルを採用した。このモデルはSOL上流、2つのダイバータ領域の入り口と2つのダイバータ板における5ケ所の温度と流束によってそれぞれプラズマ密度を決定するモデルである。また、従来のリミター配位の研究では領域ごとの温度は一様であったが、ダイバータ配位の研究では領域ごとに温度依存性を導入した。

また、現在は核融合反応を弱めてしまいさらには反応を停止する可能性があるとされているヘリウムの発生とその影響について研究を進めている。