ダイバータ板における熱負荷制御のための機械学習モデル

担当:Y.H.

研究背景

背景

 近年,エネルギー問題や環境問題の解決に向けて,核融合発電の実現が期待されています.核融合発電では,装置中心部(コア)に存在するのプラズマ粒子が起こす核融合反応で発生するエネルギーを利用して発電します.

Fig. 1 トカマク型核融合炉における磁場閉じ込めの概略図

 上図1は,トカマク型と呼ばれる核融合炉の断面図を簡略化して表した図です.コアのプラズマ粒子は非常に高いエネルギーを有し,これが装置内側の壁等に衝突すると,壁が損傷するため,同図波線で示されている磁場によってプラズマをコアに閉じ込めています.しかし,実際には磁場による閉じ込めは完全ではなく,コアからプラズマが漏れ出します.漏れ出したプラズマは,磁力線に沿って炉内下部にある「ダイバータ板」と呼ばれる装置へ輸送されます.

 このように,ダイバータ板には高エネルギーのプラズマ粒子が集中し,高い熱負荷がかかります.こうした負荷によりダイバータ板が損傷してしまうことを防ぐため,板前面に中性ガスを注入すること(ガスパフ)が考えられています.ガスパフにより,プラズマ粒子と板が接触するのを防いだり,プラズマ粒子と中性ガスの相互作用で生じる放射によって,熱負荷を分散することができます.

 ガスパフに際しては,注入するガスを適切に制御する必要がありますが,そのためには熱負荷をはじめとする諸量が計測されなければなりません.しかしながら,ダイバータ板における熱負荷を計測することは困難であるため,何らかの方法で計算または予測する必要があります.

 従来,数値計算によってダイバータ板における熱負荷を計算する研究は盛んにおこなわれてきました.しかし,一般に精密なシミュレーションほどより多くの物理現象を考慮するため,計算量が膨大になる傾向があります.そのため,リアルタイムの制御に用いるには計算時間が長すぎるという課題があります.

目的

 本研究では,機械学習によりダイバータ板における熱負荷を予測することを目指しています.機械学習を用いることで,リアルタイム制御に求められる精度・計算速度を両立できることが期待されます.