担当:H.K
研究背景・目的
近年、環境問題・地球温暖化の両観点から”核融合発電“の実現が期待されている。この発電に用いられる装置において、高温高密度の*プラズマが磁場によりコアに閉じ込められている(*プラズマとは、荷電粒子を含むほぼ中性の粒子集団)。その一部が漏れ出ると、コア周辺の境界層において磁場に沿って輸送される。その際に、磁場と磁場勾配や電位勾配の両方に垂直な方向に移動するドリフト現象が起こり、プラズマの輸送に影響を与え複雑な流れを形成する。装置内には燃料プラズマ以外に不純物が存在する。不純物がコアに混入すると発電効率の低下に繋がるため、その輸送過程の理解が重要である。不純物輸送は主に磁力線方向の力のバランスでその輸送が議論されることが多いが、プラズマと同様にドリフトが影響すると考えられる。ドリフトの影響を考慮した不純物輸送を理解、制御することは核融合発電を実現するうえで必要不可欠である。これまでの不純物に関する研究はシミュレーションが主であり、不純物輸送過程の実験的理解は十分ではない。これに対し、近年、名古屋大学において、不純物輸送の解明に焦点を当てた実験装置の開発が進められている。本研究では、実験に先んじてその装置を対象とした数値解析を行い、プラズマ分布を予測すると共に不純物輸送過程を調べる。不純物輸送のうち特にドリフトに注目し、その効果を明らかにするとともに、実験で有効となる計測などについて検討する。
研究方法
本研究では、不純物のドリフトに注目するため、ドリフトを考慮できる2次元流体コードSOLPSを用いる。SOLPSでは、イオン密度 𝑛, 磁力線平行方向のイオン流速 𝑉, 電位 𝜙, イオン温度 𝑇𝑖, 電子温度 𝑇𝑒 の5個の未知数を、それぞれ密度連続の式、運動量バランス方程式、電流連続の式、イオンエネルギーバランス方程式、電子エネルギーバランス方程式の5個の基礎方程式により求める。