新エネルギー核融合発電
近年, 新たなエネルギー源として核融合発電が注目されている. 核融合発電は文字通り核融合反応を利用した発電方法であり, 水素などの軽い原子核同士を衝突させ, 重い原子核を生成するときに発生するエネルギーを利用した発電方法である.核融合発電のメリットは以下の4つである.
メリット 1: 得られるエネルギーが非常に膨大 (水素1gの反応から石油8トン分のエネルギーが得られる)
メリット 2: 二酸化炭素を排出しない
メリット 3: 燃料資源が豊富(燃料である水素は海水中から得ることができるため)
メリット 4: 高い安全性を持つ(暴走の可能性が非常に低く, 高濃度の放射性廃棄物を排出しない)
このような, 多くのメリットを持つ核融合発電は多くの国々が関心を持っており, 2025年には世界各国が共同で開発中のトカマク型核融合炉ITERが運転開始を控えている.
ダイバータ領域での課題
しかし, 核融合炉には解決すべき課題が数多く存在し, そのうちの一つとしてダイバータ板への熱負荷が挙げられる. 核融合炉では1億℃のプラズマが存在するコア領域から漏れ出るプラズマが存在し, そのプラズマはSOL領域を通ってダイバータ板まで輸送される. よって, ダイバータ板には漏れ出たプラズマが集中するため, この熱負荷を低減させるためにSOL領域でプラズマを制御し, プラズマの温度を数百万℃まで下げる必要がある.
新たな3次元数値計算手法 LG-MC(ラグランジュ-モンテカルロ)法とは
SOL領域のより詳細な解析, 特に3次元への拡張を見据えて開発された方法のとしてラグランジュ-モンテカルロ(LG-MC)法が挙げられる. これは流体を一つの塊(粒子)として扱う流体粒子法に基づいて考案された方法である. この方法は磁力線方向にラグランジュ法を, 磁力線垂直方向にモンテカルロ法を用い, 2つの異なる方法を組み合わせることによってダイバータ領域を解析しようというものである.
- R.Tatsumi, Doctor thesis, Keio University, 2020
今後の展望
現在この方法は, 簡単なモデルのコードのみが考案されている状態であり, 実際の実験系に利用された例はない. よって本研究では, 考案されたコードを実際の実験系に利用し, その妥当性を検証するとともにコードの改良を行い, 実際の核融合炉の解析への適用を目指す.
発表実績
2022/9/1 JSST(日本シミュレーション学会)学生セッションポスター発表
2023/9/20 PET(Plasma Edge Theory)-19th ポスター発表