核融合境界層プラズマに対する3次元プラズマ流体コード構築に向けたラグランジューモンテカルロ法の開発

磁場閉じ込め核融合炉における重要課題の一つは、周辺の壁や構造物の機能を維持させながら、炉心プラズマ部での核融合反応を持続させることである。そのためにはコアから周辺領域(SOL領域)に漏れ出たプラズマの熱・粒子を、SOL領域中で適切に制御する必要がある。この熱・粒子制御のため、SOL領域中のプラズマ流体シミュレーションは重要な役目を果たすが、現在その3次元化が強く望まれている。

現在まで、SOLプラズマ流体シミュレーションには2次元有限体積法が主として用いられてきた。開発されてきた。しかし、境界付近でメッシュの作成が困難であることなどから、有限体積法の3次元への拡張は困難である。そこで、代替手法として仮想流体粒子を用いた方法が近年開発されてきているが、境界条件の取り扱い、保存則、対流問題への適用性、といった点が未だ明らかでない。よって本研究では、仮想流体粒子を用いた新しい3次元数値計算スキーム(ラグランジューモンテカルロ法(LG-MC))の開発とその数値的な妥当性検証を目的とした。

SOL領域の 磁力線方向1次元体系で行ったベンチマーク結果を図1に示す。3手法の収束解は相対誤差5%以内で一致し、これによりLG-MCの妥当性を確認した。

図1 1次元ベンチマーク結果. (n:プラズマ密度, V:平均流速)
FV:有限体積法, LG:ラグランジュ法, LG-MC:ラグランジュ‐モンテカルロ法

また、 3次元 LG-MCを円筒体系に適用した (図2)。例として密度の計算結果を図3に示す。これにより、LG-MCによるSOL領域3次元プラズマ流体解析の基盤が構築された。 今後、 実験との比較や予測シミュレーションに向けては、 1)実磁場/実形状の取り入れ、2)中性粒子モデル(粒子モデル)との統合、3)中性粒子・不純物との相互作用の追加、が必要となる。

図2 円筒形計算体系.
図2 3次元LG-MC計算結果(プラズマ密度, r-z平面).
Lz=0.6 m, Lr=0.04 m, Lr,in=0.02 m