境界層プラズマ研究 概要

核融合

 核融合とは、水素のような軽い原子核が融合してヘリウムのようなより重い原子核に変わる反応です。このとき、膨大なエネルギーが発生し、このエネルギーを発電に用いるのが、核融合発電です。
 この核融合を起こすためには、重水素と三重水素の核融合の場合、 約1億度という高温で高密度な状態を保つ必要があります。

磁場閉じ込め

 核融合を起こすためには、上記のように水素を約1億度という高温のプラズマ状態にする必要がありますが、このような高温プラズマを閉じ込めておける物質は存在しません。 そこで、荷電粒子であるプラズマが磁力線に巻き付く性質を利用し、磁場により高温プラズマを閉じ込めて、構造材に触れないようにします。 この方式を、磁場閉じ込め核融合といいます。

 Fig.1は、磁場閉じ込め核融合装置のひとつであるトカマク型核融合装置の模式図です。 

Fig.1 トカマク型核融合装置 模式図

図中の緑色のコイルと、青色のコイルによって、らせん状の磁力線構造を作り出し、その中にプラズマを閉じ込めています。(図中の黄色の部分がプラズマ)
さらに外部から中性粒子ビームやRF波を注入することで核融合に必要な温度まで加熱を行います。

そして、このトカマク型核融合装置の断面図がFig.2です。
この図は、トカマクの中心軸(緑色のコイルに相当)から、右側を輪切りにした状態です。

Fig2. トカマク型核融合装置 断面図

この図で、コアと言う部分がFig1で黄色で示されていた高温プラズマです。セパラトリクスとよばれる特別な磁気面によって、高温プラズマであるコアが真空容器に触れないように工夫されています。また、このセパラトリクスより外側の領域(図の水色の部分)は、境界層領域(=SOL)と呼ばれています。コアに閉じ込められているプラズマは衝突などによって、セパラトリクスからSOLへと漏れ出していきます。SOLへ漏れ出したプラズマは、磁力線にそってダイバータ板へと導かれていき、熱処理・排気などが行われます。

 ダイバータグループでは、SOL-ダイバータ領域を研究対象としています。ダイバータは、トカマク内部の熱負荷粒子負荷の制御、ならびに核融合反応によって生じるヘリウムの排気などにかかせない重要なものなので、特に重点をおいて研究しています。

研究内容

  • 2次元境界層プラズマシミュレーション 
     プラズマを流体的に、中性粒子をモンテカルロ法により、両者を矛盾無く解くシミュレーションコードを用い、 非接触ダイバータと呼ばれる現象や、ダイバータ形状の効果等について 解析しています。
  • 非接触ダイバータモデリング
     ダイバータに集中する熱負荷を低減する方法として、非接触ダイバータが注目されています。非接触ダイバータプラズマは、プラズマだけでなく、中性粒子、不純物、壁との間の相互作用が複雑に絡み合っており、その詳細は完全には理解されていません。そこで、上記の2次元シミュレーションや、PICと呼ばれる粒子シミュレーション、詳細な原子分子過程などを使って、非接触ダイバータ物理の解明を目指しています。
  • 不純物輸送モデリング
     ダイバータにプラズマが衝突することによって、ダイバータがスパッタされ不純物が生じます。この不純物がダイバータ領域中でどのような輸送をされるのかをシミュレーションするためのモデル開発、実験解析を進めています。

このほかにも、いくつかの研究テーマがあり、各自がそれぞれ日々研究を行っています。 

研究テーマ

核融合炉におけるタングステン壁の損耗量評価
高エネルギーパルス下におけるプラズマ-中性粒子相互作用
プラズマシミュレーションの高速化に向けた量子アルゴリズムの開発
ラグランジュ-モンテカルロ(LG-MC)法用いたプラズマシミュレーション
高エネルギーパルス入射時の核融合境界層プラズマの応答
ダイバータプラズマにおける原子分子過程の数値解析
核融合原型炉に向けたダイバータプラズマの数値解析