高エネルギーパルス下におけるプラズマ-中性粒子相互作用

核融合炉内壁への熱・粒子負荷

核融合炉では約1億度という高温のプラズマを磁場によって閉じ込めます.
トカマク型核融合炉ではコアから漏れ出したプラズマをダイバータと呼ばれる領域に集中させ,粒子排気と除熱を行います.
しかし,熱・粒子がダイバータへ集中してしまうためダイバータ板への熱・粒子負荷の低減が核融合炉実現へ向けた重要課題となっています.

トカマク型核融合炉の断面図

プラズマと中性粒子の相互作用による熱・粒子負荷の低減

プラズマと中性粒子は相互作用により,ダイバータ領域におけるプラズマの温度は下がり,さらにダイバータ板へ入射するプラズマ粒子束が減少します.
このような状態を非接触ダイバータプラズマと呼びます.
ダイバータ板への熱・粒子負荷を低減させるために非接触ダイバータプラズマを安定的に維持することが核融合炉実現に不可欠です.

さらにトカマク型核融合炉では,ELM ( Edge Localized Mode ) と呼ばれる高エネルギーパルスがコアから周期的に放出されます.
ELMはコアから定常的に流出するプラズマのエネルギーよりも10倍以上も大きいため,このようなパルスが非接触ダイバータプラズマに与える影響についての理解も重要です

そこで,高エネルギーパルスを考慮したプラズマと中性粒子の相互作用についてシミュレーション解析を行うことにより,非接触ダイバータプラズマについての理解を深めることが本研究の目的です.

数値計算モデル

プラズマと中性粒子相互作用の解析を行うために本研究ではPIC ( Particle in Cell ) 法と0次元モデルを統合した運動論的解析モデルを利用しています.
非接触ダイバータプラズマの非定常解析を行うためにPIC法を用いて,プラズマ粒子の運動とプラズマ−中性粒子相互作用(衝突)について計算します.
中性粒子については非常に多くの反応を考慮する必要があり,PIC法では計算負荷が非常に大きくなってしまいます.
そのため空間的に密度が一様あると仮定した0次元モデルを用いて中性粒子密度の計算を行います.

数値計算モデルの概略図