核融合炉におけるダイバータリサイクリングが粒子制御に与える影響

担当 T.T

1. 背景・目的

核融合炉における粒子制御

核融合反応を維持するためには、高温・高密度のプラズマを長時間維持する必要があり、炉心プラズマの粒子密度を適切に制御することが重要です。核融合炉では、プラズマから流出した粒子や熱をダイバータで受け止めます。流出した水素粒子は壁や再堆積層に吸蔵された後、再結合して中性粒子として放出され、再び電離されてプラズマへ戻ります。この過程が水素リサイクリングです。特に長時間運転では、リサイクリングによる粒子供給が外部からの燃料供給を上回る可能性があり、燃料供給による密度制御が困難になることが課題となります

ダイバータ領域の温度分布

さらに、ダイバータ領域には大きな温度勾配が存在します。従来のモデルではこの空間的な温度分布を1つの平均温度で近似するため、高温領域で生じる電離反応を十分に表現できず、プラズマ密度を過小評価する問題がありました。先行研究では、この温度分布を低温成分と高温成分からなる二温度モデルとして近似することで、電離反応を反映した粒子バランスモデルが構築されました。一方で、二温度モデルという近似そのものが、粒子密度や密度制御にどの程度影響を与えるかについては十分に評価されていませんでした。

研究目的

そこで本研究では、二温度モデルの温度および低温・高温成分の割合を変化させ、粒子密度と密度制御に与える影響を定量的に明らかにすることを目的とします。

2. 研究方法

粒子バランスモデル

核融合炉内を、

メインプラズマ, SOL, 第一壁, ダイバータ, ダイバータ板

の5領域に分け、各領域における粒子数密度の時間発展を計算します。

Fig. 1 ダイバータモデルの様子[1]
[1]奥山颯, 慶應義塾大学修士論文, 2026

各領域では温度・密度を体積平均値として扱い、空間分布を直接解くのではなく、粒子の生成・消滅・領域間輸送を追跡します。

二温度モデル

ダイバータ領域については、Fig. 2の温度分布を基に、

Fig. 2 核融合炉のダイバータ領域における温度の二次元分布[2]
[2] Asakura et al., Nucl. Fusion 66, 086020 (2026).
  • 低温成分:5 eV
  • 高温成分:100–200 eV

の2つの温度成分に分割し、実際のダイバータに存在する温度勾配を近似します。さらに、それぞれの成分割合を変化させて粒子密度への影響を調べます。

レート方程式

水素原子・水素分子・水素イオンなど9種類の粒子種を対象として、5領域における粒子の生成・消滅・輸送を連立レート方程式で記述します。

5領域 × 9粒子種 = 45本の連立方程式 を数値的に解き、粒子密度の時間発展を求めます。

3. 研究結果

Fig. 3 ダイバータ領域における一温度モデルのcase Xと二温度モデルのcaseY, Zの粒子密度

Fig.3でcaseXとcaseYを比較すると二温度モデルを導入したことで、電離反応を再現できています。高温成分が150 eVの場合と200 eVの場合ではほとんど各粒子の密度に違いは見られませんでした。

続いて、高温成分を150 eVに固定し、低温と高温領域の割合を変化させたところ、Fig. 4のようになりました。

Fig. 4 ダイバータ領域における低温、高温領域の比を変化させたときの粒子密度

低温、高温の比を1:9から5:5に変えても、ダイバータのプラズマ密度(e/H⁺)はほとんど変わりません。差は約 10% です。変わったのは中性粒子の量で、低温成分が多い caseP55 では H と H₂ が約 2 倍になりました。
高温割合を 0.5 から 0.9 にすると、H の電離係数は約 2 倍になります。ただしダイバータのプラズマ密度は電離係数ではなく、ダイバータ板への粒子流束(リサイクリング流束)とのバランスで決まるので、ほとんど変わりません(差は約 10%)。電離係数の違いは中性粒子密度に現れる形になり、高温割合が多い caseP19 では中性粒子が約半分に減ります。