核融合原型炉に向けたダイバータプラズマの数値解析

担当:中野 誠也

研究背景・概要

 核融合技術を発電プラントとして実証するために、原型炉の設計研究が進んでいる現在、炉心プラズマから排出される高熱流とプラズマ粒子の処理を行うダイバータの設計は、実現に向けた最重要課題となっています。そこで、原型炉として高核融合出力で定常運転を行うには、ダイバータへの熱負荷・損耗を低減する必要があり、ダイバータ前面でプラズマが低温化することで、中性粒子(原子・分子)が間に生じて高温プラズマが壁に直接当たらないようにする「非接触状態」の形成が不可欠になります。

 以下の図は、高温プラズマがダイバータ板に向かっていく様子であり、壁に対するプラズマの接触状態(a)と非接触状態(b)を表しています。非接触状態では、弾性散乱や再結合・電離反応などの中性粒子との相互作用を介して、プラズマの熱エネルギーを散逸・低減させることができます。

ダイバータに向かうプラズマの様子

 しかし、既存のトカマク型装置と比べてパラメータや形状が大きくなる原型炉においては、ダイバータプラズマの特性、特に非接触状態についての予測研究が十分になされていません。

 そのため、本研究の目的は、プラズマ・中性粒子相互作用についての数値解析を行うことで、将来の原型炉における非接触ダイバータの特性を明らかにすることとしています。

研究方法

 本研究では、核融合装置の周辺領域におけるプラズマ流体・中性粒子・不純物についてまとめて計算を行うことができるSONICと呼ばれるコードを用いて数値解析を行っています。

 原型炉の装置形状・パラメータを設定し、周辺部に排出される熱流のうち、希ガス不純物によってエネルギーを放射損失させるパワーを変更することで、周辺領域におけるプラズマのエネルギーバランス解析や、輻射輸送や励起分子の効果を考慮した解析を行い、ダイバータプラズマの状態変化の分析やダイバータ板への熱負荷を評価します。

研究成果

2019年12月 第36回プラズマ・核融合学会年会
2020年12月 第37回プラズマ・核融合学会年会
2021年9月 The 18th International Workshop on Plasma Edge Theory in Fusion Devices (PET21)

学習環境

 プラズマに関する研究活動では、共同研究先である量子科学技術研究開発機構(QST)や核融合科学研究所(NIFS)の研究実習に参加できたり、プラズマ・核融合学会では若手フォーラムによるzoomセミナーを視聴できたりと、研究室の内外ともに研究に関連する学習を行う機会が用意されています。