負イオンを含むプラズマにおける電位構造の系統的解析

担当 M.K

研究背景・概要

 水素負イオン源は、核融合発電において装置内のプラズマ加熱に用いられる中性粒子ビームを生成するために用いられる。この中性粒子ビームの生成過程は以下の図のようである。

ここで用いられる中性粒子ビームは核融合装置の大きさとプラズマ密度の高さゆえに1MeV以上の非常に高いエネルギーが要求されている。そこで重要となる物理現象が、シースと呼ばれる現象である。この現象は、水素負イオン源内においてプラズマ中の正イオンと電子の質量の違いに起因して壁近傍に特殊な電位構造ができる領域のことである。シースによって水素負イオン源内にて生成された水素負イオンの損失が防がれ、引き出されるビームが多くなるので非常に重要な役割を担っているといえる。
本研究では、このシースにおける電位構造に着目し、水素負イオンの生成量、温度、密度の3つのパラメータを系統的に変化させた場合の電位構造について、数値シミュレーションを用いて解析を行う。

研究方法

 本研究では、プラズマ輸送とプラズマが作る電位構造を詳細に解析するために、PICという粒子シミュレーションコードを用いる。PICコードでは、ポアソン方程式と荷電粒子の運動方程式を交互に解くことで、各グリッドにおける電位と粒子の位置を順次求めていく。

また、中性粒子との反応により生じる水素負イオンと電子の比率はパラメータとして与え、さらに壁表面から生成される水素負イオンも考慮することにする。本モデルを用いてシミュレーションを行うことで、運動論的効果も考慮することができる。最終的に、水素負イオン生成量、温度、密度の3つのパラメータを系統的に変化させて、電位構造について解析を行う。

今後の展望

 現状、研究室にあるPICコードでは、水素負イオンと電子の比率を変えるアルゴリズムや壁からの水素負イオンの表面生成などに関するコードが存在しない。そこで、本研究に取り掛かる前にコードを完成させて検証を行ってから、系統的なシミュレーション解析を行なっていきます。